【第一回】会社を辞めて「何始めよう?」の巻
「偏愛百貨店」を始めたきっかけは、自分でもちょっと意外なことでした。「会社を辞める」と決めたのがこの4月――それを友人に話したら、「何か新しいことを始めるのよね。そうでなければ辞めた意味がない」と言われたのです。
そんなつもりは露ほどもありませんでした。かれこれ10年以上、会社と離婚話を重ねてきて、ようやく実現することになった解放感もあり。ライター家業を中心に独り身を味わってみよう。そんな軽い気持ちでいたのです。
でも、そう言われて「おもしろそう」と思ってしまったのです。何しろ小学生の時、「あの木に登ったら何が見えるだろう?」と、近所の松に登ったものの、てっぺんまで行って下を見たら怖くて降りられなくなって大騒ぎに――良くも悪くも「やってみたくなる」癖があるのです。
考えました。何を始めたらいいのか、始めたいのかと。仕事柄、たくさんの人とお会いしてきて、「ねえねえ聞いて、こんな“おもしろい人”がいて、こんな“おもしろいこと”が起きている」と言い触らすのは大好きです。その“おもしろさ”は何なのかと考え、「偏愛=偏った愛情」かもと思いました。大好きなことを語っている人って、止まらなくなるくらいの勢いがあり、時にマニアック過ぎる話になっても、つい耳を傾けてしまう。そんな力を持っていると思ったのです。
楽しく愉快な「偏愛」を紹介し、それに賛同してくれた人が「お買い物」を楽しんでくれたらもっといい――買い物の持っている、作り手の思いに賛同する、共感する、応援する。そんな魅力を大切にしていきたい――「偏愛百貨店」というコミュニティを作ることにしました。
そして嬉しいハプニングが――ビームスの設楽社長におしゃべりしたら、「賛同するので協力しますよ」とおっしゃっていただき、何と「『偏愛百貨店』meets『BEAMS JAPAN』」というポップアップイベントをやらせてもらえることになったのです。「万歳!」と思う一方、道なき道をどう作っていくのか――ワクワクしながら「できるのだろうか」とドキドキです!